子どもが独立した後、犬に依存してしまう私…これって大丈夫?将来への不安との向き合い方

子どもが巣立ったあとの、あの奇妙な静けさ。夕方に「あ、もう急いで夕飯を作らなくていいんだ」と気づいた瞬間の、解放感と背中合わせの強烈な寂しさ。40代後半から50代にかけて、多くの女性が通り抜けるこの心の空白を、私も身をもって知っています。

そして、その空白を埋めるように私たちの生活のすべてになっていくのが、健気にし尾を振る愛犬の存在です。「この子が私の生きがい」そう思うのは、決して異常でも、恥ずかしいことでもありません。

しかし、現場で多くの飼い主さんの葛藤を見てきた者として、また、自身もかつて愛犬に心すべてを委ねてしまった人間として、一つの苦い反省があります。それは、「生きがい」という美しい言葉の裏で、私たちは時に、犬に「重すぎる命の責任」を背負わせてしまうということです。

愛犬を「神様」にしないための、我が家の反省

子どもがいない家で、犬は簡単に「家庭の太陽」になります。自分が注いだ愛情の分だけ、ストレートに返してくれる存在。更年期の揺らぎや、ふと過る老後の不安を忘れさせてくれる唯一の麻薬、と言ってもいいかもしれません。

かつての私は、愛犬のちょっとした体調の変化に一喜一憂し、ネットの情報を夜通し検索しては勝手に絶望していました。「もしこの子が死んでしまったら、私は生きていけない」と本気で涙を流す毎日。 ですが、あるときハッとさせられたのです。私のこの張り詰めた空気のせいで、愛犬が常に私の顔色を伺い、私が立ち上がるだけでビクッと怯えるようになっていることに。

私が犬を救っているのではなく、私の寂しさを埋めるために犬を縛り付けていた。

この反省から、私は「犬を愛すること」と「犬に執着すること」をハサミで切り離すように意識し始めました。まず変えたのは、家の中の物理的な距離感です。

「視線を外す」ためのマニアックな部屋の仕掛け

四六時中、犬と目が合う環境は、お互いにとって精神衛生上よくありません。 そこで私が実践したのが、「飼い主の気配は感じるけれど、お互いの姿は見えない」隠れ家ゾーンを部屋に作ることです。

リビングの主役だった犬用ベッドを、あえてソファの影やパーテーションの裏など、私の視線が直接届かない位置へ移動しました。そして、そこに置くおもちゃには人一倍こだわりました。ただ噛むだけのものではなく、中にフードを詰めて、犬が頭と五感を使って20分は格闘しなければならないような難易度の高い知育玩具(楽天市場などで手に入る、海外製の頑丈なラバーパズルなどが非常に優秀です)を仕込むのです。

犬が「お母さん、寂しい」ではなく、「このパズルを解くのに忙しい!」と夢中になっている時間。これこそが、飼い主である私たちにとっても、犬から意識を完全に切り離し、自分のために温かいお茶を淹れたり、本を開いたりするための「静寂の30分」を生み出してくれます。

「可愛い」だけで乗り切れない、50代からのリアルなお金の話

犬への依存が強くなると、将来の不安から目を背けがちになります。シニア期に入ったときの医療費、介護、そして自分自身の体力低下。これらを「考えたくない」と先送りにすることこそが、根底にある不安を膨らませる原因です。

私はあえて、愛犬にかかる「これからのコスト」を全てノートに書き出すという、現実的で少し痛みを伴う作業を行いました。 フード代や定期的なワクチン、健康診断だけでなく、将来必要になるであろう医療費のプール金。さらには、年齢を重ねていく愛犬の足腰を守るための高反発ドッグベッドや、もしもの時のためのペット見守りカメラ災害時の防災用品まで、楽天市場の買い物カゴやクリップ機能をフル活用して、必要な予算をすべて視覚化(見える化)したのです。

「いくらかかるか分からない」という状態が、一番人間を不安にさせ、犬への執着に変貌します。 逆に、「これだけの備えがあれば、この子の生涯をしっかり守り抜ける」という具体的な数字を持てたとき、心のざわつきは驚くほどスッと収まりました。

散歩バッグの重さを、自分のための軽さに変える

もう一つ、私が変えたのは散歩のあり方です。 以前は「犬の運動のため」に義務感で歩いていましたが、バッグの中身を「自分の快適さ」基準でアップデートしました。

お気に入りのタンブラーに自分の好きなハーブティーを淹れ、サッと取り出せる機能的な散歩用バッグや、犬用の折りたたみ給水ボトルをスマートにセットする。犬の歩調に合わせながらも、骨盤を立てて歩くように意識して、自分のための「ウォーキングの時間」として散歩を再定義してみたのです。

時には、犬をペットカートやキャリーバッグに乗せて、いつもより少し遠くの、私がずっと行ってみたかったカフェのテラス席まで足を延ばしてみる。 「犬のために出かける」のではなく、「私が楽しむために、最高の相棒に付き合ってもらう」。

この小さな主従関係の意識の逆転が、子どもを失ったあとの「お母さん」の心を、一人の「自由な大人の女性」へと引き戻してくれます。

最高の相棒だからこそ、対等な距離で

子どもは巣立ち、それぞれの人生を歩み始めました。それは寂しいけれど、大成功の証拠です。 そして今、あなたの足元にいる愛犬は、これからのあなたの第二の人生を特等席で見守ってくれる伴走者。

あなたの人生の主役は、どこまでいってもあなた自身です。犬は、その舞台を鮮やかに彩ってくれる最高の共演者。 明日からは、ほんの少しだけカメラのピントを自分自身に合わせてみてください。あなたが自分の人生を楽しんで凛と立っているとき、愛犬もまた、あなたの足元で一番深く、安心した眠りについてくれるはずですから。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする